企業型DCの活用で実現!1,650万円の資金で5,000万円の退職金を準備する方法
前回、企業型DCを導入する企業が急増している理由を3点お話しました。
① 効果的な資産形成方法(分散投資、長期運用、複利効果)
② 柔軟な制度設計(役員1名から導入可等)
③ 3つの税制優遇(掛金は全額非課税、運用益が非課税等)
今回は社長の退職金準備を例に、企業型DCがいかに効率的・効果的な資産形成方法であるかを解説します。
役員退職金を全額損金×運用で準備?!
企業型DCは社長、従業員の退職金を全額損金で積み立てでき、自身で運用先(預け先)を選択できる日本で唯一の制度です。
これまで従業員の老後資金の形成に活用することを目的に大企業を中心に導入されてきました。一方で中小企業は経営者の退職金すら十分に準備出来ない場合が多いと思います。当然、従業員への退職金支給も厳しいのが現状です。
企業型DCはこうした悩みを解決してくれます。例えば社長の退職金を5,000万円準備する前提で、「内部留保から捻出する場合」と「企業型DCで用意する場合」とで比較します。
◆内部留保から用意する場合
内部留保から準備する場合、法人税等税を仮に33%で試算すると約7,500万円の税引き前利益が必要となります。つまり7,500万円の元本を用意しなければなりません。
◆企業型DCから用意する場合
企業型DCは毎月一定金額を拠出、限度額は5.5万円/月です。25年間積み立てた場合、原資は1,650万円となります。拠出金は投資信託等で運用でき、S&P500(米国の代表的な株価指数)を指標とする投資信託を選択したとします。平均利回りは8%(1991~2021年の30年間)です。毎月コツコツ、25年間、平均利回り8%の運用で5,000万円となります。
社長の退職金5,000万円を内部留保または企業型DCで準備した場合、これだけの差が出ます。
いかがでしょうか。内部留保と企業型DCを比較すると、必要となる資金の差は何と5,850万円です。
例えば、これを25年間で割ると年間230万円の出費を抑えることができ、この資金を人材採用に充てたり、新事業の立上げに活用する等、建設的な施策に活用することで、結果的に企業価値を高めることにも通じます。
企業型DCは、毎月わずか5.5万円の拠出、しかも掛金は事業主掛金として全額損金計上できます。加えて企業型DCで積立したお金は差押禁止財産に該当します。万が一、破産した場合でも返済に充てられることはありません。中小企業の経営者の多くは、事業の安定した収益確保に日々苦労され、借入リスクも抱えていることと思います。リスクカバーという側面でも効果的です。
今回は社長の退職金準備を例にお話しましたが、老後の資産形成に効果がある点は従業員にも大いにメリットがあります。更に企業側も採用ブランド強化や定着率アップに繋がります。次回はこの点を中心に解説していきます。