今回は、外国人社員の入社手続きから労務管理までのポイントを解説します。
入社手続きのポイント
入社の手続は、日本人社員の入社手続きと同様に行います。社会保険・労働保険共に、国籍による加入要件の相違はありません。ただし、年金の二重加入を防ぐための社会保障協定を日本と締結している国から派遣されてくる外国人については、母国で年金制度に加入している場合、日本の年金制度の加入を5年間免除されます。
また、外国人社員の場合は、入社時に「外国人雇用状況の届出」を行わなければなりません。外国人社員が雇用保険に加入する場合は、雇用保険被保険者資格取得届の様式で届け出ますが、雇用保険に加入しない場合は、外国人雇用状況届出書を当該外国人社員が勤務する事業所の住所を管轄するハローワークに提出します。雇用保険の加入の有無で届出方法や届出先が異なるので、注意が必要です。
労務管理のポイント
労働基準法第3条では、あらゆる労働条件において、国籍を理由とする差別的な取扱いを禁止しています。また、技術・人文知識・国際業務や特定技能の在留資格においては、その許可基準のひとつとして、同じ業務を行う日本人社員と同等以上の賃金待遇を求めています。差別的な取扱いはしないということを大前提に、外国人社員の待遇を決定する必要があります。
また、就業規則を始めとする社内の文書類を多言語化することも必要です。外国人社員が職場に順応しやすい環境を整え、あるいは日本語能力の不足が原因となる労災事故を防ぐために、円滑なコミュニケーションを促進する工夫やマニュアルの多言語化等の努力が求められます。また、日本での生活に不慣れな外国人社員には、日本の生活習慣や文化に対する支援が必要な場合もあります。出入国在留管理庁が16言語で作成・公開している生活オリエンテーション動画を活用することも一案です。
よくある質問
最後に、外国人の労務管理についてのFAQをふたつ、ご紹介します。
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外国人社員から旧正月を祝いたいので休暇が欲しいと言われたら?
業務に支障が出ないよう、あらかじめ外国人社員と話し合うことが重要です。母国の慣習を一切無視してしまうと、円滑な雇用契約を維持することが難しくなる可能性が生じますので、注意しましょう。
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外国人労働者の宗教に対する配慮は必要?
義務ではありませんが、例えば礼拝場所を用意するなど出来る限りの配慮をすることが望ましいと言えます。宗教に関する事項については、外国人労働者との間で致命的な問題を惹起しかねないため、可能な配慮を検討しましょう。
まとめ
人手不足の打開策として注目される外国人雇用ですが、外国人労働者獲得のための国際的な競争が激化しているため、外国人に選ばれる雇用環境づくりという視点が重要になってきています。
ご紹介した外国人雇用のポイントや注意点を基礎知識として、外国人雇用の取り組みにお役立ていただければ幸いです。