「投資は、お金に余裕がある人がするもの」
「まずは一生懸命働いて、余ったお金を貯金しておけば安心」
そう考えている方も多いのではないでしょうか。
もちろん働いて収入を得ることは生活の基本です。しかし、物価が上昇し、将来の生活を自分自身でも準備していくことが求められる時代に、「働いて得る給与」だけに頼ることには、実は一定のリスクがあります。これから必要になるのは「自分が働く」ことに加えて「お金にも働いてもらう」という考え方です。
今回は、なぜ会社員こそ資産形成を考える必要があるのか、そもそも投資とはどのようなものなのか、そして企業型確定拠出年金(企業型DC)などを活用して資産形成を始める際に何を大切にすればよいのかを分かりやすく解説します。
「働くだけ」は一番危険な一点集中!?物価高の時代を生き抜く会社員の「二頭立て」資産形成術

目次
「給与だけで生きる」ことにもリスクがある
働くことは「自分自身への一点集中」とも考えられる
私たちは通常、会社で働き、その対価として給与を受け取ります。ごく当たり前の仕組みですが、少し違った角度から考えてみましょう。
給与収入だけで生活するということは「自分自身が働き続けられること」に収入の大部分を依存している状態でもあります。
投資の世界では、一つの商品や一つの会社だけに資産を集中させることを避け、「分散」が重要だと言われます。
ところが収入について考えると、意外にも「自分一人」に集中している方は少なくありません。
自分が元気に働くことができている間は問題ありませんが、病気やケガ、失業などで働けなくなった場合には、収入が大きく減少する可能性があります。また年齢を重ねると若い頃と全く同じ体力や働き方を維持できるとは限りません。何より人間に与えられている時間は誰でも1日24時間です。労働時間を増やすことで収入を増やそうとしても、そこには物理的な限界があります。
つまり、給与一本で生活することは下記のような特徴があります。
・時間と体力が収入に直結する
・病気や失業などの影響を受けやすい
・年齢とともに働き方が変化する可能性がある
・働ける時間には限界がある
働くこと=資産形成になっていた時代と違って、働くだけでは生活に十分な資産が形成できません。そう考えると上記の特徴はリスクでもあります。だからこそ、これからの資産形成では「自分だけが働く」という状態から、「自分+お金が働く」という二つの柱を持つことが重要になってきます。

貯金しているだけでも「お金の価値」は変わっていく
「貯金は安全、投資は危険」は本当?
日本では長い間、「投資は怖いもの」、「貯金しておけば安心」というイメージが強くありました。確かに銀行口座に100万円を預けておけば、原則として口座に表示される100万円という数字そのものが突然50万円になるわけではありません。その意味では現金は分かりやすく、安心感があります。しかし、ここで考えなければならないのが「物価」です。100万円という数字が変わらなくても、100万円で買えるモノの量が減ってしまえば、実質的なお金の価値は下がっていることになります。
身近な商品から分かるインフレの影響
身近な例、たとえばポテトチップスで考えてみます。(下記の表を参照下さい。)
1975年当時、一袋90gの商品が100円で販売されていました。現在一袋は55gが一般的です。比較のため同じ90gに換算して比較すると、その後、価格水準は上昇しています。1975年から2023年、この約50年で100円が200円に値上がりしたということとなります。ここで注目したいのは「商品の値段が上がった」ということだけではありません。
反対側から見れば同じ100円で買えるモノが少なくなった=100円の実質的な価値が下がったということです。これがインフレを考えるうえで非常に重要なポイントです。現金の100円という数字は変わっていなくても、その購買力は変化しているのです。
もっと着目したいのが値段の上がるスピードです。100円から150円にあがるまで約30年かかっていましたが、150円から200円にあがるまでは約15年と2倍のスピードなのです。ちなみに今年6月より更に価格改定されていますが、90g換算すると278円程度にまで上がっています。

投資とは「ギャンブル」ではなく、経済活動に参加すること
投資にマイナスイメージを持つ人は多い
「投資」と聞くと「損をしそう」、「ギャンブルみたい」、「投資詐欺が怖い」「お金持ちがやるもの」というイメージを持つ方もいるでしょう。ニュース等でも「投資詐欺」という言葉を耳にすることもありますし、インターネット上には「短期間で大きく儲かる」といった情報もあふれています。そのため「投資=危険」という印象を持ってしまうのも無理はありません。しかし本来の投資は「短期間で大金を稼ぐこと」とはまったく異なります。
投資したお金は企業や社会の成長に使われる
例えば株式投資では投資家が企業に資金を提供し、その資金を活用して企業が事業を成長させます。企業では多くの従業員が働き、新しい商品やサービスを生み出し利益を上げます。その結果、企業価値が高まったり、利益の一部が配当として株主に還元されたりします。つまり自分自身がその企業で働いていなくても、自分のお金が企業の活動に参加し、その成果の一部を受け取るという仕組みです。
債券も考え方は似ています。国や企業などに資金を貸し、その資金がさまざまな事業に活用され、その対価として利息を受け取ります。
投資とは本来、企業や社会の成長に資金を提供し、その成長の成果を投資家も受け取る仕組みなのです。

「自分が働く」と「お金に働いてもらう」の違い
労働収入では自分が働いた時間や仕事に対して給与を受け取ります。一方、投資では投資した先の企業で多くの人が働き、利益を生み出してくれます。もちろん投資には価格変動があり、必ず利益が出るわけではありません。しかし「自分の時間だけを使って収入を得る」という方法以外にも、お金を経済活動に参加させる方法があることを知っておくことは、これからの資産形成を考えるうえで非常に重要です。
初心者が投資を始めるなら「投資信託」という選択肢
どの会社が成長するかを自分で当てるのは難しい
では実際に投資を始めようとした場合、どの企業の株を買えばよいのでしょうか。
A社が成長するのか、B社が成長するのか。それを自分で判断するには、企業の業績や将来性、経済状況などを調べなければなりません。
仕事をしながら全てを分析するのは初心者にとって簡単なことではありません。
そこで選択肢になるのが「投資信託」です。投資信託は多くの投資家から集めた資金をまとめ、株式や債券など複数の資産に投資する金融商品です。自分で一社ずつ株式を選ぶのではなく一つの投資信託を通じて複数の企業や資産へ投資できるため投資初心者でも分散投資を行いやすくなります。企業型DCでも、多くの投資信託が運用商品の選択肢として用意されています。
大切なのは「一番儲かりそうな商品」を探すことではない
投資を始めると、どうしても、「どの商品が一番増えるのか」、「一番利回りが高いものはどれか」ということが気になってしまいます。
しかし企業型DCによる資産形成は15年、20年、30年と長期間続けることも想定される制度です。短期間の値上がりだけを見るのではなく、自分自身が価格の上下に耐えながら長く続けられる商品を考えることが大切です。投資では元本割れの可能性をゼロにすることはできません。
だからこそ「大きく儲けること」よりも「無理なく長く続けること」という視点を持っておきましょう。
資産形成の基本は「長期・分散・積立」
① 長期 ― 短期間の値動きに振り回されない
投資では、景気や社会情勢によって資産価格が大きく下落することがあります。しかし短期間の値動きだけを見て「投資は怖い」と判断するのではなく、長い期間で経済の成長を捉えることが重要です。世界経済はこれまで金融危機や感染症の流行などさまざまな出来事を経験してきました。その過程では大きな下落もありましたが、長期的には成長を続けてきました。
企業型DCは老後に向けて長期間運用していく制度だからこそ、この「時間」を活用しやすい仕組みでもあります。
② 分散 ― 一つだけに集中しない
「卵を一つのカゴに盛るな」という投資の有名な考え方があります。一つのカゴにすべての卵を入れていると、そのカゴを落としたときに全部割れてしまいます。複数のカゴに分けておけば、一つを落としても他の卵は残ります。
投資も同じです。一つの会社、一つの国、一つの資産だけに集中するのではなく、株式や債券、国内・海外などに分散することで、一つの投資先の値下がりによる影響を抑えることができます。
③ 積立 ― 毎月コツコツ続ける
そしてもう一つが「積立」です。一度に大きなお金を投資するのではなく、毎月一定額を継続して投資していく方法です。価格が高いときにも安いときにも定期的に購入することで、購入するタイミングを一度に集中させない効果があります。
企業型DCは、原則として毎月掛金を拠出して運用していくため、長期・分散・積立という資産形成の基本を実践しやすい制度といえます。
企業型DCは「投資に詳しい人だけの制度」ではない
企業型DCやNISAなどの制度は「投資に詳しくなってから始めよう」と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、こうした制度は投資の専門家だけが利用するためのものではありません。将来に向けて多くの人が資産形成を行いやすくするために整備されている制度です。
特に企業型DCでは、毎月一定額を積み立てながら長期間運用することができます。また、掛金や運用益、受取時などに税制上の優遇が設けられていることも大きな特徴です。
投資を「一気にお金を増やすもの」と考えるのではなく「将来の自分のために、お金の置き場所を少しずつ変えていくもの」と考えると、イメージしやすいのではないでしょうか。働いて得たお金を全て使ったり現金で保有したりするのではなく、その一部を企業型DCなどを通じて投資に回し、長い時間をかけて育てていく。これも、これからの時代の一つの働き方ならぬ「お金の働かせ方」です。
まとめ ~「自分」と「お金」の二つで働こう~
今回最もお伝えしたいのは「働くことをやめて投資をしましょう」という話ではありません。仕事をして収入を得ることは、これからも生活の基本です。ただし、給与収入だけに頼っていると、病気やケガ、失業、加齢などによって働けなくなった場合の影響が大きくなります。
さらにインフレが続けば、現金の金額そのものが変わらなくても、そのお金で買えるモノやサービスは少なくなっていく可能性があります。
だからこそ「自分が働いてお金を稼ぐ」+「お金にも働いてもらう」という二つの考え方を持つことが大切です。
そして投資を始めるときに重要なのは、短期間で大きく儲けることではありません。「長期・分散・積立」を基本に、無理のない金額から、焦らずコツコツ続けることです。
企業型DCはそのために活用できる選択肢の一つです。投資を「怖いもの」「自分には関係のないもの」と遠ざけるのではなく、これからの生活を守るための資産形成の方法として、まずは正しく知ることから始めてみてはいかがでしょうか。




