キャリアアップ助成金の令和8年度の支給要件や助成メニューが公表されました。今後に申請において重要な変更点がいくつかあり、別記事でも紹介しています。その中で、企業型確定拠出年金(企業型DC)に関わる重要な変更点も含まれています。
目次
キャリアアップ助成金とは
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成されるものです。
正社員転換を行う「正社員化コース」をはじめ、「賃金規程等改定コース」、「賞与・退職金制度導入コース」、「短時間労働者労働時間延長支援コース」など、様々なコースがあります。
今回は上記のうち「正社員化コース」において、昇給要件の算定基準の見直しが入りました。これまで賃金の一部として認められるケースがあった選択制の企業型DCにおける事業主掛金が、計算対象外となります。助成金の活用を検討している企業は、今後の賃金の見直す際に十分注意する必要があります。その具体的な概要と対策、今後の考え方に関して2回に分けて解説していきます。
令和8年10月以降は3%昇給要件で企業型DCが対象外に
正社員化コースにおいて3%昇給要件の計算方法が変更されます。これは2026年10月1日以降に正社員へ転換する場合に適用されます。
これまで選択制の企業型DCにおける事業主掛金は、昇給額の算定基礎賃金に含めて良いことになっていましたが、これが対象外となります。
今後は基本給やその他の手当といった、労働基準法上の賃金に該当する部分のみで3%以上の増額を達成する必要が出て来ます。
「正社員化コース」とは。
このコースは、有期雇用労働者等を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)へ転換、または直接雇用する事業主に対して助成を行う制度です。
これにより有期や無期といった雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保し、労働者の意欲や能力を向上させることを目的としています。
優秀な人材の採用・定着を図ることで、企業の生産性向上に寄与します。また安定した無期雇用への転換を促進する目的もあります。
新ルール適用の開始時期
新ルールは、令和8年10月1日以降に行われる正社員への転換から適用が開始されます。
裏を返すと令和8年9月30日までに実施された正社員転換については、これまでの旧ルールに基づいた申請が可能であることを意味します。
申請を計画している場合、上記を参考に賃金体系の見直しや転換スケジュールを検討する必要があります。
選択制の企業型DC事業主掛金が対象外となる理由
今回の見直しについて、厚生労働省は「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A」において、次のように説明しています。
【見直し理由】
・企業型確定拠出年金(選択型)の事業主掛金(掛金運用額)は、労働基準法・雇用保険法等において賃金に該当しないこと
・他制度における取扱いとの整合性
等に鑑み取扱いを見直すこととしました。
また、変更後の取扱いとして、選択制DCの掛金運用額については賃金増額要件の算定対象外とする考え方が示されています。
【厚生労働省が示した変更後の取扱い】
厚生労働省Q&Aでは、以下のような考え方が示されています。
・前払い退職金を原資とする生涯設計手当は原則として算定対象外
・選択制DCの掛金運用額も算定対象外
・一定の条件を満たす場合には、生涯設計手当のうち給与として取り扱われる部分について算定対象となる可能性がある
・転換前後で制度内容に大きな変更がない場合は、生涯設計手当を除外して賃金を比較するケースがある
※詳細は厚生労働省Q&A(P44 Q-6)をご確認ください。
参照:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A」P44 Q-6
実は選択制の企業型DC(選択制DC)の事業主掛金は、これまでも賃金増額の対象となるのかについては議論の対象とはなってきましたが、厚生労働省は今回のQ&Aにおいて、選択制DCの事業主掛金を正社員化コースの賃金増額要件の算定対象外と整理しました。
そもそも選択制DCは、従業員が自身の給与の一部を掛金として拠出するか、給与として受け取るかを選択する仕組みが特長です。そのため厚生労働省は今回のQ&Aにおいて、選択制DCの掛金運用額について、正社員化コースにおける賃金増額要件の算定対象外として整理しています。
企業は自社の賃金制度がキャリアアップ助成金の支給要件を満たしているか、再度の確認が不可欠です。助成金の申請を円滑に進めるためには、現行制度と新ルールの違いを正確に理解し、早期に支給要件確認を行うことが重要です。
次回は今後、企業型DCを導入する際に助成金を活用する上で利用可能なコースに関してご紹介します。




