企業型DCとDBの併用で、小規模事業所にも新たな退職金制度を構築
①相談内容
・従業員6名の障害者児童福祉事業を運営していたが、これまで従業員向けの退職金制度がなく、新たに制度を整備したいとの相談があった。
・小規模な事業所ではあるものの、従業員が将来に向けて資産形成できる福利厚生制度として、企業型DCを中心とした退職金制度を検討したいという希望があった。
・また従業員だけでなく役員についても企業型DCを活用し、法定上限まで掛金を拠出できる制度設計とすることで、将来の資産形成と社会保険料負担の軽減を両立させたいという要望があった。
②争点
・従業員6名という小規模な事業所において、会社側の負担と従業員のメリットのバランスを取りながら、どのような退職金制度を構築するかが大きなポイントとなった。
・当初は企業型DCのみで退職金制度を整備することを検討していたが、制度改正を踏まえると、DC単独ではなくDB(確定給付企業年金)を併用することで、より効果的な制度設計が可能になると考えられた。
・また選択制DCとすることで、従業員それぞれのライフプランや資産形成に対する考え方を尊重しながら、制度を利用できる仕組みとすることも重要な検討事項となった。
③解決内容
・企業型DCとDBを併用する形で、新たな退職金制度を構築した。
・企業型DCについては選択制を採用し、生涯設計手当を役員月額55,000円、従業員月額20,000円として制度設計した。
・2024年12月の制度改正により、DCとDBを併用する場合の企業型DCの拠出限度額の計算方法が変更されたことも踏まえ、両制度を組み合わせることが適していると判断した。
・資格喪失年齢は70歳とし、従業員が長期に勤務する場合にも、できるだけ長く企業型DCを活用して資産形成を続けられる制度とした。
・退職金制度を整備したことをきっかけに、従業員の間でもDCとDBの違いや、企業型DCの掛金額、運用商品の選択などが話題となり、資産運用への関心が徐々に高まる結果となった。
④社労士所感
今回の事例では、「従業員数が少ないから退職金制度の整備は難しい」という考え方にとらわれず、企業型DCとDBを組み合わせることで、小規模事業所にも適した退職金制度を構築できたことが大きなポイントです。
・企業型DCは大企業だけの制度ではなく、少人数の事業所でも福利厚生や人材定着、採用力向上の観点から活用を検討する価値があります。
・特に選択制DCの場合、会社が一律に掛金を拠出する方法とは異なり、従業員本人の考え方に応じた選択肢を設けられるため、小規模事業所でも導入を検討しやすい仕組みの一つです。
・一方で、企業型DCは導入すること自体が目的ではありません。従業員自身が掛金や運用商品について理解し、自らの将来について考えることが重要です。
今回、制度導入後に従業員の間で「DCとDBは何が違うのか」「掛金はいくらにするのか」「どの商品を選ぶのか」といった会話が生まれていることは、非常に意義のある変化といえます。
退職金制度を単なる福利厚生として終わらせるのではなく、従業員が自分自身の将来や資産形成を考えるきっかけにしていくことも、企業型DCを導入する大きな意義の一つです。
今後は継続的な投資教育なども行いながら、制度を「導入して終わり」にせず、従業員の将来の安心と人材定着につながる福利厚生制度として育てていくことが期待されます。




