給与締め日は変更できるか?
①相談内容
給与計算を『毎月20日締め・当月末払い』で行っている企業様が、給与計算事務の都合上、『毎月10日締め・当月末払い』へ変更することを検討していました。支払日は変更せず、締め日のみ変更する案でしたが、このような変更が可能か、また、可能な場合、変更する際の注意点について、ご相談がありました。
②争点
今回のケースでは、
- 会社が給与の締め日を変更できるか
- 変更に際して必要な手続きは何か
- 移行時に発生する従業員への影響にどのように対応すべきか
が争点でした。
特に、締め日を20日から10日に変更した場合、移行月には賃金計算の対象期間が通常より短くなるため、一時的に給与支給額が少なくなることへの対応が重要なポイントとなりました。
③解決内容
給与の締め日は、原則、自由に決定し、又は変更できるとされているため、就業規則や賃金規程の見直しを行い、従業員へ適切に周知したうえで変更することは可能であるとご説明しました。
また、今回のケースでは、移行月に給与支給額が少なくなるため、
- 変更理由
- 変更後の賃金計算期間
- 移行月の給与計算方法
について、事前に十分な説明を行うことを提案しました。
さらに実務上の工夫として、移行月の給与額が一時的に少なくなることへの配慮として、賞与支給月に合わせて制度変更を実施する方法を提案しました。賞与支給月であれば、従業員の手取り収入への影響を緩和しやすいためです。
また、4月から6月に制度変更を実施する場合には、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を決定するための算定基礎届への影響についてもご説明し、給与事務だけでなく社会保険への影響も踏まえて変更時期を検討するよう提案しました。
④社労士所感
給与の締め日を変更する際における実務上のトラブルの多くは、従業員への説明不足から発生するようです。会社としては賃金総額を減らしているわけではなくても、移行月の支給額が一時的に少なくなると、従業員には「給与が減額された」と受け止められることがあります。そのため、変更の目的や移行時の計算方法を事前に丁寧に説明することが重要です。従業員への配慮としては、無利子の貸付制度を設けたり、既往の労働分の給与前払いに柔軟に応じたりすること等も有効な方策と考えられます。
また、今回のように支払日を変更しないケースは比較的実施しやすいものの、支払日を後ろへ変更する場合には、従業員が賃金を受け取る時期が実質的に遅くなるため、不利益変更に該当し、より慎重に対応しなければなりません。
さらに、従業員が、支払日の変更に応じて住宅ローン返済等に関する諸手続きが必要になることも想定して、その準備に必要な時間を確保するために、十分な予告期間を設けて周知することも重要になります。
給与の締め日や支払日の変更は、従業員の生活にも影響を及ぼします。制度変更を検討する際には、法令面だけでなく従業員への影響も含めて総合的に検討することが、円滑な移行につながると言えます。
なお、支払日を変更する際には、労働基準法が定める「毎月払いの原則」を遵守するため、移行期に「給与支払いがない月」が発生しないようにすることも大切です。




