雇入れ時健康診断の費用は本人負担でも問題ない?
①相談内容
顧問先企業から、雇入れ時健康診断の取扱いについてご相談を受けました。
同社では、新たに採用した従業員に対し、入社前までに各自で医療機関を受診し、健康診断結果を提出するよう求めており、その受診費用についても本人負担として運用していました。
しかし、社内で「雇入れ時健康診断は会社に実施義務があるにもかかわらず、受診費用まで本人負担としてよいのか」との疑問が生じたことから、現在の運用に法的な問題がないか確認したいとのご相談でした。
②争点
雇入れ時健康診断については、労働安全衛生法に基づき事業者に実施義務があります。一方で、健康診断の費用負担者について明確な定めが法令上ありません。
そのため、
- 会社に実施義務がある以上、費用も会社が負担すべきなのか
- 入社予定者本人に受診を任せ、費用も自己負担とする運用が可能なのか
- 既に受診済みの健康診断結果を提出してもらう場合の費用負担はどう考えるべきか
が問題となりました。
③解決内容
厚生労働省は、一般健康診断の実施義務は事業者に課されていることから、「当然、事業者が負担すべきものであること。」との見解を示しています(基発第602号)。
また、雇入れ時健康診断については、雇入れ前3か月以内に受診した健康診断結果であって、法令で定める必要項目を満たしている場合には、その結果を提出させることで改めて健康診断を実施しなくてもよいとされています(労働安全衛生規則)。
この場合、従業員が自らの都合で既に受診していた健康診断の結果を提出するものであり、その受診費用まで会社が負担しなければならないとは考えられていません。
一方で、本件のように、会社が入社予定者に対し「健康診断を受けてきてください」と指示している場合には、実質的には会社が実施すべき健康診断を本人に行わせていることになります。そのため、費用については、会社負担とすることが適切であると助言しました。
④社労士所感
雇入れ時健康診断については、雇入れ前3か月以内に受診した健康診断結果で一定の要件を満たす場合、改めて健康診断を実施しなくてもよいとされていることから、健康診断は本人に任せ、その費用も本人負担で問題ないと考えられているケースが少なくないようです。
しかし、この取扱いは、入社予定者が既に受診していた健康診断結果を活用する場合を想定したものです。
会社が受診を指示しながら費用を本人負担としている場合には、「会社が実施義務を適切に果たしているのか」という観点から疑義が生じる可能性があります。
法令違反とまでは直ちにいえないケースであっても、入社予定者とのトラブル防止や採用時の印象向上という観点からも、会社負担としておくことが適切と言えます。




