中退共と企業型DCの併用で、退職金1,000万円を目指す制度を構築
①相談内容
・ソフトウエア開発を行う従業員10名の企業から、社長交代を機に退職金制度を見直したいというご相談をいただいた。
・設立から約25年が経過し、これまで約20年間、中小企業退職金共済(中退共)を利用してきた。しかし役員が加入できないことや予定利率が低水準であることから中退共からの脱退も含めて検討していた。
・定年は65歳であるものの、60歳時点で1,000万円の退職金原資を準備することを目標としており、その実現に向けた制度設計を希望していた。
・企業型DCの導入にあたっては会社が従業員全員の掛金を給与に上乗せして負担するとともに、従業員本人も掛金を拠出できる「マッチング拠出」を取り入れたいという意向があった。
②争点
・長年利用してきた中退共を廃止して企業型DCに切り替えるか、中退共を継続しながら企業型DCを併用するか、目標とする退職金額を踏まえて検討する必要があった。
・会社として退職金の準備を進めながら、より積極的に資産形成を行いたい従業員には本人の希望に応じて積立額を増やせる仕組みを設けることがポイントとなった。
・平均勤続年数15年、平均年齢44歳と長期勤続の従業員が中心であることから、これまでの勤続を掛金額に反映するとともに、今後の採用にも対応できる制度設計が求められた。
・また長期勤続者の退職金準備という制度の目的を踏まえ、入社後短期間で退職した場合の会社拠出分の取扱いも整理する必要があった。
③解決内容
・検討の結果、中退共を継続しながら新たに企業型DCを導入し、両制度を併用して退職金を準備することとした。
・中退共に加え、企業型DCの会社拠出と従業員本人によるマッチング拠出を活用することで、一定の前提条件のもとでは、目標の1,000万円を超える資金を準備できる試算となった。
・企業型DCの事業主掛金は勤続年数に応じて月額5,000円から30,000円とする設計とした。勤続3年未満は月額5,000円からスタートし、勤続年数年ごとに月額1,000円ずつ増額することで、長く働くほど会社からの積立額が増える仕組みとした。
・さらにマッチング拠出を採用し、従業員が自身のライフプランや家計の状況に応じて掛金を追加できるようにした。
・資格喪失年齢は定年に合わせて65歳とした。また今後の従業員増加も見据え、勤続3年未満で退職する場合には、規約に定める条件に基づき会社拠出分を事業主へ返還する仕組みを設けた。
④社労士所感
今回の事例では、中退共からの脱退も検討されていましたが、目標とする退職金額から必要な積立額を確認し、中退共と企業型DCを併用する制度を構築したことが大きなポイントです。
・退職金制度の見直しでは、各制度の特徴を比較するだけでなく、「何歳までに、いくら準備したいのか」という目標を明確にすることが重要です。従業員の年齢や勤続年数を踏まえて試算することで、自社に必要な積立額や制度の組み合わせを検討しやすくなります。
・勤続年数に応じて会社掛金が増える仕組みは、長く働く従業員への支援を制度として具体化するものです。会社が将来の生活を支える姿勢を示すことで、従業員が安心して働き続けられる環境づくりにもつながります。
・また、会社が負担する掛金にマッチング拠出を組み合わせることで、会社による退職金準備と従業員自身による資産形成を両立できます。その際は、会社が準備する部分と本人が積み立てる部分を分けて説明し、従業員が制度を理解した上で活用できるようにすることが大切です。
なお、今回の1,000万円という金額は試算上の目標であり、将来の受取額を保証するものではありません。企業型DCの資産額は掛金額や運用状況によって変動するため、導入後も継続的な投資教育を行い、従業員が自身の資産形成を考えられるよう支援していくことが重要です。




